食中毒について

コロナ禍だからこそ、改めて気をつけたい「食中毒」のお話。

みなさんこんにちは、はやかわ循環器内科クリニック院長の早川裕です。

コロナ禍と言われるようになって2度目の夏がやってきました。

ワクチン接種も一定数進んだり、イベントの開催もあるようなので、今年こそは楽しい夏を過ごしたい・・・という方も多いのではないでしょうか。

新型コロナウイルスについては、皆さんそれぞれに注意されていると思います。

一方で、いつも気をつけるべきことに目が向いていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、今年もしっかり気をつけていただきたい「食中毒」のお話をご紹介します。

食中毒について

コロナ禍に隠れてあまり話題にならないですが、最近は腹痛や下痢、嘔吐などの症状で当院を受診される患者さまが増えてきました。

梅雨や夏の時期になると食中毒の患者さまが増えてきます。

この時期は「食あたり」や「急性胃腸炎」などと呼ばれることが多いですが、食中毒とは、ウイルスや細菌など有害・有毒な物質を含む飲食物を食べた事によって起こる下痢や嘔吐、発熱などが起きる病気の総称です。

冬場に流行る「嘔吐下痢症」も医学的には食中毒の仲間です。

食中毒の種類

食中毒はその原因によって、いくつかの種類に分類されます。

日本国内で発生する食中毒の多くは、細菌とウイルスによるものです。

夏場に増えるのが細菌性食中毒,冬場に増えるのがウイルス性食中毒と大まかに考えるとわかりやすいです。

今回は夏場の食中毒を中心にお伝えしたいと思います。

感染性食中毒

細菌性食中毒は毒素型と感染型に分けることができます。

感染型食中毒では、食中毒の原因菌が体内で増殖することで胃腸の機能が低下し下痢や嘔吐の症状が現れます、一般に想像される食中毒です。代表的な細菌はカンピロバクターやサルモネラなどです。

細菌の増殖には温度と水分と栄養分が必要です。特に食中毒を引き起こす細菌の多くは、夏場の高温多湿の状況を好みます。

細菌は夏場であれば20分ごとに2倍に増殖します。

1時間で8倍、2時間で64倍・・・ 数学で習った2Xの速度でどんどんと増えていきます。

夕食後のまな板に細菌が残っていたら??と考えると恐ろしいことになります。

この話をするときに、いつも思い出すのはネコ型ロボットで有名な漫画の「バイバイン」という未来の道具です。

増殖する栗まんじゅうにより地球に危機が訪れ、食べきれない栗まんじゅうをロケットで宇宙に飛ばすという、現在ではクレームが来るような内容でした(汗)。

子ども心に、「ほんとに宇宙が栗まんじゅうで覆われたらすごいな」と思ったものです。

実際にはわれわれの生活環境では増殖にある程度のピークがあり、まな板を覆い尽くすほどの増殖はありませんが、それでも十分に食中毒を引き起こす力はあります。

細菌の増殖による症状なので基本的には抗生物質で治療できますが、そもそもの細菌が増えないようにすることの方が重要です。

食品内毒素型食中毒

毒素型食中毒菌では、原因菌が増殖するときに毒素を産生し、その毒素によって症状を発症する場合をいいます。

食品中ですでに毒素が作られている場合を食品内毒素型と呼びます。

黄色ブドウ球菌が有名です。健康な人でも、鼻の中や皮膚に常在しており、体調が悪くなると増殖して症状を引き起こします。

傷口の化膿などはこの細菌によることも多いです。

黄色ブドウ球菌の毒素による食中毒には大きな問題があり、産生する毒素が非常に熱に強いという性質があります。

つまり食事のため加熱して細菌は死滅しても、細菌の残した毒素で食中毒が発症してしまうことがあります。

さらにこれは抗生剤で治療した際にも同じことが言えるので、治療によっても症状が取れないどころか、細菌内に残された毒素が、むしろ死滅することで人体内に流出し症状が残存・増悪することも考えられます。考えただけでも恐ろしいですね。

体内毒素型食中毒

一般、体内毒素型食中毒は、その名の通り生体内で毒素が作られる食中毒でO-157が有名ですね。

人に感染したあとに増殖していく過程で毒素を産生するという、感染型と毒素型の2つの特徴を持っています。

O-157は「日本で下痢では死なない」と言われていた医療の常識をくつがえした、非常に強い毒素をつくる細菌です。

その他の毒素型食中毒菌も症状が強いことが多いため、出来るだけ早く医師による診察・治療を受けることが望ましいです。

食中毒予防の3原則

どのような病気でも同様に言えますが、食中毒への対応として最も重要なものは予防です。

しかし個人個人で食中毒が起こらないように気を付けるといっても、何に気を付けたらいいのか、どうやって対策したらいいのか具体的にわからないかもしれません。

そこで「食中毒予防の3原則」という言葉をみなさんに知っていただきたいです。

食中毒は、その原因となる物質(細菌やウイルス)が食べ物に付着し、体内へ侵入することによって発症します。

夏場の食中毒は細菌によって起こるものが多いので、原因となる細菌を食べ物に「つけない」、食べ物に付着した細菌を「増やさない」、食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」という3つのことが原則となります。

食中毒は毎日食べている家庭の食事でも発生しています。

家庭での発生では一般に症状が軽く、発症する人も1人や2人と少ないために食中毒と気づかれないことが多いです。

ラッパのマークのお薬などで対応されているかたも多いと思います。まずは食中毒になる前に心がけていただけたらと思います。

①つけない

手にはさまざまな雑菌が付着します。原因菌を食べ物に付けないようにこまめに手を洗いましょう。

  1. 調理の前
  2. 生肉や魚、卵などに触れたあと
  3. 調理中、トイレに行ったり、鼻をかんだりしたあとや動物に触れたあと
  4. 食卓につく前
  5. 残った食品を扱う前

などは特に気をつけてください。

また、肉や魚を切ったまな板や包丁から、加熱しないで食べる野菜などへ菌が付着することもあります。

使用するたびに洗うなど清潔を保つようにしましょう。最近は焼き肉屋さんでお肉を扱うためのトングが置いてありますがこの理由です。

②増やさない

食中毒の原因となる細菌の多くは一般に10℃から60℃の温度で増殖します。

10℃以下では増殖がゆっくりとなり、マイナス15℃以下では増殖が停止すると言われています。

食べ物に付着した菌を増やさないためには、お肉や魚などは購入後なるべく早く冷蔵庫に入れてください。

しかし冷蔵庫に入れても、細菌は死滅することなく、ゆっくりと増殖します。

買ってきた食材は早めに消費することが大事です。

③やっつける

ほとんどの細菌は加熱によって死滅します。

特に肉料理は中心までよく加熱することで安全性が増します。

焼きすぎても美味しくなくなりますので難しいところですが、中心部を75℃で1分以上加熱することが目安となっています。

まな板、包丁なども、肉や魚切ったあとは洗剤で洗ったり、熱湯をかけたりすると殺菌効果が期待できます。

最近は調理場で使用する殺菌剤もたくさん種類が増えてきました。

利用してみるのも良いかもしれませんね。

コロナ禍でテイクアウトやデリバリーの利用が増えていると思います。

どうしても調理から食べるまでの時間が長くなることが想定され、食中毒のリスクが増す可能性があります。

嘔吐や下痢、腹痛などの症状は,悪いものを身体の外に出そうとする正常な防御反応です。

重症にならずに済む場合も多いですが、中には毒素型食中毒のように生命を脅かす危険な病気も隠れています。

我慢をせずに早めに医療機関を受診してください。

はやかわ循環器内科クリニック 院長 早川 裕

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