みなさんこんにちは。
鹿児島市のはやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。
仕事の後や休日の夜、リラックスのためにお酒を飲むのが楽しみ、という方は少なくないでしょう。適度な飲酒は心身を和らげると感じるかもしれません。しかし、もしあなたが「いびきがひどい」「寝ている間に息が止まっていると言われた」「睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断された」という場合は、そのお酒が、実は睡眠の質やSASの症状を悪化させている可能性があります。
今回は、飲酒が睡眠、特に睡眠時無呼吸症候群の症状にどのような悪影響を与えるのか、そのメカニズムと、皆さんが知っておくべき注意点について、私、早川が詳しく解説していきます。
1. なぜお酒を飲むとSASやいびきが悪化するのか?
アルコールは、私たちの体に様々な影響を与えますが、睡眠時無呼吸症候群やいびきに関しては、主に以下のメカニズムで症状を悪化させます。
- 喉の奥の筋肉の弛緩作用 アルコールには、全身の筋肉を弛緩させる作用があります。寝ている間、喉の奥にある舌の付け根(舌根)や軟口蓋(のどちんこの周りの柔らかい部分)の筋肉も緩んでしまいます。これにより、これらの組織が重力によって喉の奥に落ち込みやすくなり、空気の通り道である気道が狭くなったり、完全に塞がってしまったりします。 この状態は、まさに閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が起こるメカニズムそのものです。お酒を飲んで寝ると、いつもはいびきをかかない人でもいびきをかき始めたり、SASの症状がある人は、無呼吸の回数や時間がさらに増えたりする傾向があります。
- 呼吸中枢への影響 アルコールは、呼吸をコントロールする脳の呼吸中枢にも影響を与えます。これにより、呼吸の回数や深さが減少する可能性があります。呼吸の力が弱まることで、気道の閉塞がより起こりやすくなり、無呼吸のエピソードが増えることにつながります。
- 鼻粘膜の充血 お酒を飲むと、血管が拡張し、鼻の粘膜が充血して腫れることがあります。これにより鼻づまりが引き起こされ、鼻呼吸がしづらくなり、口呼吸へと移行しやすくなります。口呼吸は、舌が下がりやすくなるなど、気道を狭くする要因となるため、いびきや無呼吸を悪化させる一因となります。
2. 飲酒が引き起こす、睡眠へのその他の悪影響
お酒が睡眠時無呼吸症候群を悪化させるだけでなく、飲酒は睡眠の質そのものにも悪影響を及ぼします。
- 睡眠の質の低下(分断された睡眠) アルコールは、入眠を早める効果があると感じる方もいますが、これは一時的なもので、その後の睡眠の質を大きく低下させます。 具体的には、睡眠の途中で何度も目が覚める「中途覚醒」が増えます。また、深い眠りである「ノンレム睡眠」が減少し、浅い眠り(レム睡眠やステージ1・2のノンレム睡眠)が増える傾向にあります。これにより、睡眠時間は確保できていても、脳や体の疲れが十分に取れず、朝の目覚めが悪かったり、日中に眠気が残ったりする原因となります。
- 脱水症状 アルコールには利尿作用があり、体内の水分を体外に排出します。これにより脱水状態となり、夜間のどが渇いて目覚めてしまうなど、睡眠が中断されやすくなります。
- 頻尿 利尿作用により、夜中にトイレに行く回数が増えることも、睡眠が分断される大きな要因です。これにより、深い睡眠が妨げられ、疲労回復が阻害されます。
3. SAS患者さんが飲酒する際の注意点と対策
もしあなたが睡眠時無呼吸症候群と診断されている、あるいはひどいいびきに悩んでいるのであれば、飲酒習慣を見直すことが、症状改善への非常に重要な一歩となります。
- 飲酒を控えることが最も重要: 特に寝る前の飲酒は絶対に避けるべきです。就寝の少なくとも4時間前からは飲酒しないように心がけましょう。できれば、飲酒自体を控える、あるいは量を減らすことをお勧めします。
- 飲酒量・種類の見直し: 少量のアルコールでも、人によっては喉の筋肉の弛緩作用が強く出る場合があります。また、炭酸飲料は胃を膨らませ、横隔膜を圧迫して呼吸を妨げる可能性もあります。
- 体質・体調と相談: アルコールの代謝能力には個人差があります。自分の体の状態をよく観察し、少しでも睡眠の質が悪くなったと感じたら、飲酒量を減らすか、完全に控えるようにしましょう。
- CPAP治療との両立: CPAPを使用しているからといって、飲酒の影響が完全に消えるわけではありません。CPAPの効果を最大限に引き出すためにも、飲酒は控えることが望ましいです。飲酒によりCPAPの効果が低下し、本来得られるはずの治療効果が得られなくなってしまう可能性もあります。
- 専門医への相談: 飲酒量や睡眠状態について、正直に私にご報告ください。飲酒が原因でCPAP治療がうまくいかないケースも少なくありません。皆さんの睡眠習慣を把握することで、より的確なアドバイスが可能です。
4. 健康的な睡眠習慣のためのアドバイス
飲酒習慣の見直しと並行して、健康的な睡眠習慣を身につけることもSAS改善には欠かせません。
- 規則正しい生活リズム: 毎日同じ時間に寝起きし、体内時計を整えましょう。
- 適度な運動: 日中の適度な運動は、夜間の質の良い睡眠につながりますが、寝る直前の激しい運動は避けましょう。
- バランスの取れた食事: 肥満はSASの大きなリスク要因です。栄養バランスの取れた食事で適正体重を維持しましょう。
- 禁煙: 喫煙は喉の炎症や気道の腫れを引き起こし、SASを悪化させます。
まとめ
お酒は、楽しいひとときを演出してくれるものですが、睡眠時無呼吸症候群やいびき、そして睡眠の質には、残念ながら悪影響を及ぼします。特に寝る前の飲酒は、喉の筋肉を弛緩させ、気道を狭くすることで、症状を顕著に悪化させる可能性があります。
健康な睡眠を取り戻し、高血圧や不整脈といった循環器疾患のリスクを低減するためにも、飲酒習慣の見直しは非常に重要です。
もし、いびきや日中の眠気でお悩みでしたら、まずは正確な診断を受けることが大切です。はやかわ循環器内科クリニックでは、地域の皆様の健康な睡眠をサポートするため、睡眠時無呼吸症候群に関するご相談も積極的に受け付けております。鹿児島市で睡眠のことでお悩みの方は、ぜひ私にご相談ください。












