桜島の火山灰対策とSAS(睡眠時無呼吸症候群)寝室の空気環境を整えて快眠を守る

みなさんこんにちは、はやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。

鹿児島市で暮らす私たちにとって、「桜島の火山灰」は切っても切れない宿命のようなものです。「ああ、また降っているな」と窓の外を眺めることも日常茶飯事でしょう。
しかし、その火山灰が、皆様の「睡眠の質」や、日中の「我慢できない眠気」、ご家族から指摘される「大きないびき」に関係している可能性を考えたことはありますでしょうか?
実は、火山灰による空気環境の悪化は、SAS(睡眠時無呼吸症候群)のリスクを高めたり、すでにSASの方が症状を悪化させたりする一因になり得ます。
循環器の専門医として、今回は「火山灰」と「SAS」、そして快適な睡眠を守るための「寝室の空気環境」について、詳しくお話ししたいと思います。

火山灰はただの砂じゃない? 目に見えない小さな粒子(PM2.5など)のリスク

火山灰が降ると、車やベランダがザラザラになるだけでなく、私たちの健康、特に「呼吸」に様々な影響を与えます。
火山灰と聞くと、目に見える「砂」のような粒子を想像するかもしれません。しかし、本当に注意が必要なのは、目に見えないほど小さな粒子、特にPM2.5(微小粒子状物質)です。

火山灰には、このPM2.5が含まれていることがあり、非常に小さいため、呼吸によって肺の奥深くまで入り込んでしまいます。

降灰シーズンに増える「咳」や「息苦しさ」の正体

火山灰が降った日に、いつもより咳が出たり、喉がイガイガしたり、息苦しさを感じたりすることはありませんか? これは、火山灰の粒子が気道(空気の通り道)を刺激し、炎症を引き起こしているサインです。 もともと喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)をお持ちの方は、症状が悪化しやすいため特に注意が必要です。

見落としがちな「睡眠の質」の低下と火山灰の関係

そして、見落とされがちなのが「睡眠」への影響です。 日中に吸い込んだ火山灰や、窓の隙間などから寝室に入り込んだ微細な粒子が、寝ている間も私たちの気道を刺激し続けます。 これにより、睡眠中に無意識のうちに呼吸が浅くなったり、鼻づまりが悪化したりして、睡眠の質が低下してしまうのです。

なぜ火山灰がSAS(睡眠時無呼吸症候群)を悪化させるのか?

では、なぜ火山灰が「SAS(睡眠時無呼吸症候群)」と関係するのでしょうか。

そもそもSASとは? 睡眠中に呼吸が止まる、循環器にも負担をかける病気

SAS(Sleep Apnea Syndrome)とは、その名の通り、睡眠中に呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)することを繰り返す病気です。 代表的な症状は「大きないびき」や「日中の強い眠気」ですが、怖いのはそれだけではありません。

呼吸が止まるたびに体内の酸素濃度が下がり、心臓や血管に大きな負担がかかります。これを毎晩繰り返すことで、高血圧、心筋梗塞、脳卒中といった深刻な循環器疾患のリスクが格段に高まることが分かっています。

火山灰が気道を刺激! 鼻づまりや喉の炎症が空気の通り道を狭くする

ここが重要なポイントです。 火山灰の粒子が鼻や喉の粘膜を刺激すると、炎症が起きて腫れたり、鼻水や痰(たん)が増えたりします。いわゆる「鼻づまり」や「喉の違和感」です。

ただでさえSASの方は、もともと空気の通り道(上気道)が狭くなりやすい傾向があります。そこに火山灰による炎症が加わると、気道はさらに狭くなり、いびきや無呼吸が悪化しやすくなるのです。

「火山灰が降った日は、いつもよりいびきがうるさい」「息苦しくて夜中に目が覚める」と感じる方は、この影響を強く受けている可能性があります。

あなたは大丈夫? SAS(睡眠時無呼吸症候群)の簡単セルフチェック

ご自身やご家族に、以下のような症状がないかチェックしてみてください。SASはご自身では気づきにくい病気です。

  • 大きないびきをかく(特に、いびきが急に止まり、その後あえぐような呼吸で再開する)
  • 日中、我慢できないほどの強い眠気がある(会議中、運転中など)
  • 朝起きた時に頭痛がする
  • ぐっすり眠ったはずなのに、熟睡感がない、疲れが取れない
  • 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
  • ご家族から「寝ている時に息が止まっている」と指摘されたことがある

もし複数当てはまるようであれば、一度専門医に相談することをお勧めします。

今日からできる! 質の高い睡眠を守る「寝室の火山灰対策」決定版

SASの悪化を防ぎ、鹿児島で快適な睡眠を確保するためには、他のどの部屋よりも「寝室」の空気環境を整えることが重要です。人生の約3分の1を過ごす場所だからです。

基本対策:窓の開閉タイミングと、こまめな「湿式清掃」

  • 窓開け換気は「降灰後」を避ける: 降灰中や降灰直後は、外気が火山灰で汚れています。換気は、降灰が落ち着き、道路などが清掃された後(雨が降った後なども良い)にしましょう。
  • 掃除は「湿式」で: 乾いたモップやほうきで掃除をすると、床に積もった細かい灰が舞い上がってしまいます。寝室の掃除は、固く絞った雑巾やウェットタイプのフロアワイパーで「拭き掃除」を徹底してください。

最も重要! 寝室にこそ置きたい「空気清浄機」の選び方

火山灰対策、特に寝室の環境維持において、最も効果的なのは「空気清浄機」の活用です。

窓を閉め切っていても、火山灰の微細な粒子は隙間から侵入してきます。 寝室には、「HEPA(ヘパ)フィルター」を搭載した空気清浄機を選んでください。HEPAフィルターは、PM2.5のような非常に小さな粒子もしっかりとキャッチできる高性能フィルターです。

睡眠中も常に稼働させ、寝室の空気をクリーンに保つことが、気道への刺激を減らし、SASの悪化を防ぐ鍵となります。

意外な盲点? 加湿器を使った「湿度コントロール」の重要性

空気清浄機と合わせて使いたいのが「加湿器」です。 空気が乾燥していると、鼻や喉の粘膜も乾燥し、火山灰の刺激を受けやすくなります。また、粘膜の防御機能も低下してしまいます。

寝室の湿度を適切(目安:50~60%)に保つことで、粘膜を保護し、炎症を抑える効果が期待できます。空気清浄機と加湿器を上手に併用しましょう。

灰を持ち込まない工夫(布団や洗濯物の外干し、衣服のケア)

  • 降灰が予想される日や降灰中は、布団や洗濯物の外干しを避けましょう。灰が繊維の奥に入り込んでしまいます。
  • 外から帰宅した際は、家に入る前に衣服についた灰をよく払い落とすことも大切です。

火山灰対策は循環器と睡眠を守る第一歩。SASが心配なら専門医へ

桜島の火山灰は、私たちの呼吸器や睡眠環境に、思った以上の影響を与えている可能性があります。
特に「いびき」や「日中の眠気」は、SAS(睡眠時無呼吸症候群)の重要なサインかもしれません。

SASを放置することは、高血圧や心筋梗塞など、命に関わる循環器疾患のリスクを高めることにつながります。

まずは、できることから始めてみましょう。 寝室の「空気清浄機」と「加湿器」を導入し、こまめな湿式清掃を心がけること。それだけで、睡眠の質が変わってくるかもしれません。

そして、もしセルフチェックでSASが疑われる場合や、ご家族のいびきでご心配な場合は、「いつものことだから」「体質だから」と放置せず、ぜひお気軽に当院にご相談ください。 当院では、SASの簡易検査から診断、CPAP(シーパップ)治療と呼ばれる専門的な治療まで、循環器の専門家として皆様の健康をサポートしています。

火山灰と上手に付き合いながら、質の高い睡眠と、健やかな毎日を守っていきましょう。

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