みなさんこんにちは。
鹿児島市のはやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。
突然ですが、あなたは「いびきがうるさいと家族に言われる」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きると顎がだるい、頭が痛い」といったお悩みを抱えていませんか? これらの症状、もしかすると「マウスピース治療」で改善できるかもしれません。
マウスピースと聞くと、スポーツ選手が使うものや、歯列矯正のイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、医療用のマウスピースは、いびきや睡眠時無呼吸症候群、歯ぎしりといった、皆さんの健康を脅かす様々な症状の改善に貢献します。
今回は、このマウスピース治療について、その種類から効果、どのような症状に効果的なのか、そして治療の進め方まで、循環器内科医の視点も交えながら分かりやすく解説していきます。
マウスピース治療って何?その種類と主な目的
医療で用いられるマウスピースは、歯科医院で型を取り、患者さん一人ひとりの口腔内に合わせて作製される「口腔内装置」の一種です。その目的は多岐にわたりますが、主に以下の目的で使用されます。
1. 睡眠時無呼吸症候群・いびき改善用マウスピース(OA:Oral Appliance、口腔内装置)
「いびきがひどい」「寝ている間に息が止まっていると言われた」という方には、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。この病気は、寝ている間に何度も呼吸が止まることで、体内の酸素濃度が低下し、心臓や血管に大きな負担をかけます。
睡眠時無呼吸症候群・いびき改善用のマウスピースは、寝ている間に下顎を少し前方に突き出すように固定することで、舌の付け根や軟口蓋(のどちんこの周りの柔らかい部分)が沈み込むのを防ぎ、気道を広げます。これにより、空気の通り道が確保され、いびきや無呼吸の回数を減らす効果が期待できます。
CPAPとの違いは?
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法に「CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)」があります。CPAPは、鼻に装着したマスクから空気を送り込むことで、常に気道に圧力をかけ、気道の閉塞を防ぐ治療法です。
| 比較項目 | マウスピース治療 | CPAP治療 |
| 特徴 | 小型で持ち運びやすい。下顎を前方に固定。 | マスクとチューブが必要。空気を送り込む。 |
| 利点 | 比較的装着感が少ない。旅行や出張に便利。 | 重度の睡眠時無呼吸症候群にも効果的。 |
| 欠点 | 重度の無呼吸症候群には不向きな場合がある。 | マスクの装着感、持ち運びの手間。 |
軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群の方や、CPAP治療が苦手な方、またはCPAP治療に抵抗がある方にとって、マウスピース治療は有効な選択肢となります。
2. 歯ぎしり・食いしばり防止用マウスピース
夜間の歯ぎしりや食いしばりは、ご自身では気づきにくい症状ですが、朝起きた時に顎の痛みや頭痛、肩こりを感じたり、歯がすり減ったり、詰め物や被せ物が破損する原因にもなります。
歯ぎしり・食いしばり防止用のマウスピースは、上下の歯が直接触れ合うことを防ぎ、歯や顎関節への負担を軽減します。また、顎の筋肉の過度な緊張を和らげる効果も期待できます。
この他にも、スポーツ時の衝撃から歯を守る「スポーツマウスガード」や、ホワイトニング、歯列矯正の補助として使われるマウスピースもありますが、当院では主にいびき・睡眠時無呼吸症候群、歯ぎしり・食いしばりの治療に力を入れています。
こんな症状にはマウスピース治療が効果的!適応症例を詳しく解説
では、具体的にどのような症状でお悩みの方にマウスピース治療が適しているのでしょうか。
1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
- 軽度~中等度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の方: CPAP治療が必須となる重度の方を除き、マウスピース治療で症状の改善が期待できます。
- CPAP治療が困難な方、CPAPに抵抗がある方: マスクの装着感や、持ち運びの手間などからCPAP治療の継続が難しい場合、マウスピース治療を検討できます。
- いびきが主な症状の方: 睡眠時無呼吸症候群の診断は受けていないけれど、ひどいいびきに悩んでいる方も、マウスピースでいびきが改善する可能性があります。
2. いびき
習慣性のいびきに悩む方で、特に軽度な閉塞性睡眠時無呼吸が原因の場合、マウスピース治療が非常に有効です。ご家族からいびきを指摘される、旅行先で同室の方に迷惑をかけてしまうといったお悩みがある方は、ぜひご相談ください。
3. 歯ぎしり・食いしばり
- 朝起きた時の顎の痛み、頭痛、歯の痛みがある方: 夜間の歯ぎしりや食いしばりが原因で、これらの症状が出ている可能性があります。
- 歯のすり減り、詰め物・被せ物の破損がある方: 長期間の歯ぎしり・食いしばりは、歯に大きなダメージを与えます。マウスピースで保護することで、これ以上の進行を防ぎます。
- その他: 軽度の顎関節症の症状がある場合も、マウスピースで顎への負担を軽減できることがあります。
マウスピース治療の進め方と注意点
マウスピース治療は、患者さん一人ひとりの状態に合わせた適切な診断と作製が非常に重要です。
1. 診察・診断
特に睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まずは専門医による正確な診断が必要です。当院では、循環器内科として、睡眠時無呼吸症候群が心臓や血管に与える影響についても詳しく検査し、総合的に判断します。必要に応じて、連携する医療機関での精密検査をお願いすることもあります。
2. マウスピースの作製プロセス
診断に基づき、治療の適応となれば歯科医師と連携したマウスピースの作製に進みます。
- 型取り: 患者さんの歯型を採取します。
- マウスピースの作製: 採取した歯型に基づき、オーダーメイドのマウスピースを作製します。
- 調整・装着指導: 完成したマウスピースを実際に装着していただき、フィット感や噛み合わせなどを細かく調整します。日常生活での使用方法やお手入れ方法についても丁寧にご説明します。
3. 日常生活での使用法と注意点
- 装着時間: 基本的に就寝時に装着していただきます。
- お手入れ方法: 毎日、専用のブラシや洗浄剤で清潔に保つことが重要です。
- 定期的な受診の重要性: 治療効果の確認や、マウスピースの調整のため、定期的に受診していただく必要があります。快適に長く使い続けるためにも、ぜひご協力ください。
4. 保険適用について
睡眠時無呼吸症候群の治療としてマウスピース作製を行う場合、保険が適用される場合があります。ただし、医師による診断や特定の条件を満たす必要がありますので、ご来院時に詳しくご説明させていただきます。費用についても、お気軽にお尋ねください。
まとめ
マウスピース治療は、いびきや睡眠時無呼吸症候群、歯ぎしりといった、日々の生活の質を低下させるだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性のある症状に対して、有効な治療法の一つです。
特に循環器疾患をお持ちの方や、将来の循環器疾患のリスクを減らしたい方にとって、睡眠時無呼吸症候群の改善は非常に重要です。
もし、ご自身やご家族のいびき、睡眠の質、朝の身体の不調でお悩みでしたら、一人で抱え込まず、まずは専門医にご相談ください。はやかわ循環器内科クリニックでは、患者さん一人ひとりの症状に真摯に向き合い、最適な治療法をご提案いたします。鹿児島市でマウスピース治療をお考えの方は、ぜひ当院にご相談ください。皆様の健康な毎日をサポートできるよう、尽力いたします。












