みなさんこんにちは、はやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。
最近の鹿児島は10月まで30度を超える日が続き、秋雨が降ったあとなどに一気に冷え込む傾向があるように思います。
私たちの体は、季節の変化にゆっくりと適応するようにできています。しかし、近年の鹿児島のように「秋が短く、急に寒くなる」気候は、その適応システムに大きな負担をかけます。
体が「夏モード」から切り替われない! 自律神経の混乱とは
暑い間、私たちの体は熱を逃がすために血管を広げ、汗をかく「夏モード(副交感神経優位)」になっています。 しかし、急に冷え込むと、今度は体温を逃さまいと血管を急激に収縮させ、体を緊張させる「冬モード(交感神経優位)」に切り替えなければなりません。
この「モード切替」を担うのが自律神経です。 切り替えが急すぎると自律神経が混乱し、「なんとなくダルい」「疲れが取れない」「よく眠れない」「頭痛やめまいがする」といった、いわゆる「秋バテ」の症状を引き起こします。
循環器専門医が警鐘:急な寒さが引き起こす「血管の収縮」と「血圧の乱高下」
私が専門とする循環器領域において、この「急な寒さ」は最も警戒すべき要因の一つです。 寒いと感じると、体は熱を保持しようと瞬時に血管を収縮させます。細くなった血管に血液を通そうとするため、心臓はより強い力で血液を押し出さねばならず、結果として血圧が急上昇します。
もともと高血圧の方や、血管が動脈硬化で硬くなっている方は、この急激な血圧上昇が引き金となり、狭心症、心筋梗塞、脳卒中といった命に関わる病気を発症するリスクが格段に高まるのです。
なぜ早いうちから準備が必要なのか?
「まだこんなに暑いのに、冬の準備なんてピンとこない」と思われるかもしれません。 しかし、体が「夏モード」にどっぷり浸かっている今だからこそ、ゆっくりと「冬モード」へ軟着陸(ソフトランディング)させる準備が必要なのです。
- 準備①【体】:体を「急な寒さ」に慣らしていく 「暑い→寒い」のギャップが大きければ大きいほど、体へのショックは強くなります。10月のうちから生活習慣を少しずつ見直し、寒さへの耐性を徐々につけていくことが大切です。
- 準備②【環境】:冬の危険(ヒートショック)を今から減らす 冬場に多発する「ヒートショック」(暖かい部屋と寒い脱衣所・浴室との温度差で血圧が乱高下し、失神や心筋梗塞などを起こすこと)も、根本は「寒暖差」です。暖房器具の点検など、環境整備を10月中に済ませておけば、最初の冷え込みに慌てず対応できます。
循環器内科医が推奨する「今から始めるべき冬支度」5つの習慣
では、具体的に何をすればよいのでしょうか。今日から始められる5つの習慣をご紹介します。
習慣① 食事:「冷たいもの」から「温かい汁物・タンパク質」へ徐々にシフト
まだ暑いと、冷たいそうめんや飲み物を選びがちです。しかし、内臓から冷やすと自律神経の働きが鈍くなります。
- 冷たい飲み物は常温にする。
- 食事に一品、温かいスープや味噌汁を加える。
- 豆腐や魚、鶏肉など、良質なタンパク質を摂り、冬に向けて熱を生み出せる体を作る。 この「徐々に温かいものを増やす」意識が大切です。
習慣② 入浴:シャワーだけで済ませず、「ぬるめの湯船」で自律神経を整える
暑いとシャワーで済ませがちですが、これでは体がリラックスモードに入りにくくなります。 38〜40度程度の「ぬるめの湯船」に10〜15分浸かる習慣を再開しましょう。 副交感神経が優位になり、血流が改善し、自律神経のバランスが整います。これは冬場のヒートショック対策の「予行演習」にもなります。
習慣③ 運動:暑さを避けた「朝夕のウォーキング」で体力を維持する
夏バテで落ちた体力を回復させ、冬の寒さに負けない体を作るためにも、軽い運動は不可欠です。 日中の暑い時間を避け、比較的涼しい朝や夕方に、20〜30分程度のウォーキングを習慣にしましょう。心地よい汗をかくことは、自律神経の訓練にもなります。
習慣④ 睡眠:寝室の温度変化に注意。寝具の準備を始める
明け方の冷え込みで目が覚めることはありませんか? 寝ている間の「寒暖差」も体には負担です。薄手の毛布や掛け布団を準備しておき、気温に合わせて調整できるようにしておきましょう。質の良い睡眠は、自律神経を整える最大の良薬です。
習慣⑤ 環境:「暖房器具の試運転」と「衣類の準備」は10月中に
「急に寒くなった日に、エアコンの暖房が動かない!」 こんな事態を避けるため、10月中に一度、暖房器具の試運転をしておきましょう。 また、セーターやコート、マフラーなども、すぐに取り出せる場所に準備しておきます。11月の「最初の一冷え」の日に、我慢して薄着で出かけることが最も危険です。
特に注意が必要な方:高血圧、心臓病の持病がある方へ
高血圧や狭心症、心筋梗塞の既往がある方、ご高齢の方は、この「10月から11月への急激な冷え込み」に最大の注意が必要です。
- 「最初の一冷え」で血圧が急上昇し、心臓発作や脳卒中の引き金になることがあります。
- 寒さを感じ始めたら、こまめに家庭で血圧を測定する習慣をつけてください。
- 処方されているお薬は、絶対に自己判断で中断・減量しないでください。
- 少しでも「胸が苦しい」「動悸がする」「めまいがする」といった異変を感じたら、寒暖差による一時的なものと自己判断せず、かかりつけ医に相談してください。
健康な冬はこの時期の過ごし方で決まります
鹿児島の気候は、私たちに「秋」という準備期間をあまり与えてくれません。だからこそ、まだ暑さが残るうちから、意識的に「体を冬モードに慣らしていく」必要があります。
健康な冬を迎えられるかどうかは、この時期をどう過ごすかにかかっていると言っても過言ではありません。 「まだ暑いから大丈夫」と油断せず、食事、入浴、運動、環境整備を少しずつ見直していきましょう。
当院でも、皆様が元気に冬を越せるよう、血圧管理や体調の相談を随時受け付けております。不安なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。












