腕時計が「医療のパートナー」になる時代

鹿児島市のはやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。

2026年を迎え、医療テクノロジーは目覚ましい進化を遂げています。かつて「健康管理のためのガジェット」であったスマートウォッチ、特にApple Watchは、今や我々循環器内科医にとって、患者様の命を守るための「重要な医療補助ツール」へと進化しました。

なぜ、専門医である私が特定のデバイスを推奨するのか。そこには曖昧な期待ではなく、医学的な期待があります。

隠れた「不整脈」を捉え、脳梗塞を未然に防ぐ

循環器内科医が最も警戒する不整脈の一つに「心房細動」があります。これは心臓が細かく震え、血栓(血の塊)ができやすくなる病気です。この血栓が脳に飛ぶと、重い後遺症を残す脳梗塞を引き起こします。

心房細動の恐ろしさは、「時々しか出ない(発作性)」ことと、「自覚症状がない場合が多い」ことです。病院での数分間の心電図検査では見逃されるケースが少なくありません。

Apple Watchの「不整脈の通知」機能および「心電図(ECG)アプリ」は、日本国内でも管理医療機器としての承認(PMDA承認)を得ています。24時間、手首で心拍のリズムをモニタリングし、異常を検知した際に通知を行うこの機能は、無症状の心房細動を早期発見するための極めて有効なスクリーニング手段です。

診断を確定させる「確定的なデータ」の提供

患者様から「たまに動悸がする」と相談を受けても、診察時には正常に戻っていることは多々あります。これまでは、24時間心電図(ホルター心電図)を装着していただくしかありませんでしたが、それでも「検査をしていない日に限って症状が出る」という課題がありました。

Apple Watchがあれば、症状が出たその瞬間に、ご自身で心電図を記録できます。

当院の診察室で、患者様が記録したPDFデータを確認することで、それが「治療が必要な不整脈」なのか「心配のない期外収縮」なのかを即座に判断できるケースが増えています。この「発生時の客観的データ」は、診断のスピードと正確性を劇的に向上させます。

一刻を争う事態を知らせる「緊急通報機能」

循環器疾患は、時に意識を失うような事態を招きます。Apple Watchに搭載されている「転倒検出機能」は、激しい転倒を検知した後に一定時間動きがない場合、自動的に緊急通報(119番)を行い、登録された家族に位置情報を送信します。

また、安静時に心拍数が異常に上昇、あるいは低下した場合のアラート機能も、心不全の悪化や徐脈性不整脈の早期発見に寄与します。一人暮らしの高齢者の方や、心疾患の既往がある方にとって、これは単なる時計ではなく「24時間見守る看護師」を雇っているのに近い安心感を提供します。

しかし、過信は禁物です

医師として、あえて明確に申し上げます。Apple Watchは「心筋梗塞」を診断することはできません。

  • 胸の痛みや圧迫感がある
  • 冷や汗を伴うような激しい動悸がある

このような「急性症状」がある場合は、時計の判定を待つのではなく、即座に救急車を呼ぶか医療機関を受診してください。Apple Watchはあくまで「異常に気づくためのセンサー」であり、最終的な診断と治療方針の決定は、我々医師の役割です。

2026年、スマートデバイスを活用した予防医療を鹿児島で

私は、大病院での経験を経て、この鹿児島市で地域の皆様の健康を守る道を選びました。最新のテクノロジーを否定するのではなく、それを正しく医療に取り入れることで、防げるはずの病気を未然に防ぎたいと考えています。

Apple Watchを導入したけれど使い方がわからない、あるいは通知が来て不安だという方は、ぜひそのデータを持って当院へお越しください。

2026年、皆様が健康で、そして安心して毎日を過ごせるよう、はやかわ循環器内科クリニックはデジタルと心の通った診療の両面からサポートしてまいります。

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