こんにちは。鹿児島市のはやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。
当院では、高血圧や動脈硬化などの循環器疾患をはじめ、それらの引き金となる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の検査や治療に力を入れています。日々、地域の皆様の診療を行う中で、近年特に若い世代や働き盛りの方から、タバコに関するこのような質問を受けることが増えてきました。
「紙タバコをやめて加熱式タバコにしたから、健康への影響は少ないですよね?」 「シーシャ(水タバコ)は煙が水を通るから、体に害はないって聞いたのですが……」
結論からお伝えすると、加熱式タバコやシーシャであっても、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクを高め、結果として心臓や血管に大きな負担をかける原因になります。
今回は、循環器内科医としての経験を踏まえ、加熱式タバコやシーシャが睡眠と血管にどのような悪影響を及ぼすのか、わかりやすく解説します。
1. 「紙タバコじゃないから大丈夫」という誤解
「煙が出ない」「フルーティーな香りがする」といった特徴から、加熱式タバコやシーシャは紙タバコに比べて「健康的」「害が少ない」と誤解されがちです。
しかし、IQOSなどの加熱式タバコの多くには、紙タバコと同様に依存性物質である「ニコチン」がしっかりと含まれています。また、シーシャ(水タバコ)もフレーバー(タバコ葉)を炭で炙って吸う仕組みであるため、基本的にはニコチンが含まれており、さらに長時間をかけて大量の煙を吸い込むため、体に取り込まれる有害物質の総量は決して少なくありません。
この「ニコチン」こそが、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる大きな原因の一つなのです。
2. 加熱式タバコ・シーシャが睡眠時無呼吸症候群(SAS)を悪化させる理由
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。加熱式タバコやシーシャを吸うことで、この症状が引き起こされたり、悪化したりするのには明確な医学的理由があります。
理由①:ニコチンによる空気の通り道(上気道)の炎症
ニコチンを含んだ煙や蒸気を吸い込むと、喉や気道の粘膜が刺激を受け、慢性的な炎症を起こします。粘膜が腫れて肥厚すると、空気の通り道である「上気道」が狭くなります。睡眠中はただでさえ全身の筋肉が緩んで気道が狭くなりやすいため、粘膜の腫れが加わることで、窒息(無呼吸)状態がさらに発生しやすくなるのです。
理由②:睡眠中の「ニコチン切れ」による覚醒
ニコチンには強い覚醒作用があります。就寝前に吸うと脳が興奮して寝付きが悪くなるだけでなく、睡眠中に体内のニコチン濃度が低下すると、一種の「離脱症状(ニコチン切れ)」が起こり、脳が夜中に何度も覚醒してしまいます。これにより睡眠が細切れになり、SASによる睡眠の質の低下に拍車をかけます。
理由③:シーシャ特有の一酸化炭素による低酸素状態
シーシャは炭を使用してタバコ葉を加熱するため、高濃度に「一酸化炭素(CO)」が発生します。睡眠時無呼吸症候群は、呼吸が止まることで血液中の酸素が不足する病気ですが、シーシャによって一酸化炭素を体内に取り込んでいると、酸素を運ぶヘモグロビンが妨害され、体はさらに深刻な酸欠状態(低酸素血症)に陥ってしまいます。
3. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が心臓や血管に与える負担
なぜ、循環器内科医である私がここまで睡眠やタバコの影響を強調するのでしょうか。それは、睡眠時無呼吸症候群が心臓病や脳卒中の強力なリスク因子だからです。
夜間に無呼吸が起こり、体が酸欠状態になると、脳は命の危険を察知して交感神経を過剰に緊張させます。これにより、本来は休むべき睡眠中に血圧が急上昇し、心臓は強いストレスを受け続けます。
この状態が毎晩繰り返されると、
- 血管が傷ついて硬くなる(動脈硬化)
- 高血圧が慢性化する
- 心臓の脈が乱れる(不整脈・心房細動など)
といった循環器疾患のリスクが跳ね上がってしまいます。「たかがいびき」「たかが嗜好品」と放置することは、血管の寿命を縮めることにつながりかねません。
4. 質の良い睡眠と健康な心臓を守るために
健康な体づくりの第一歩は、睡眠の質を見直すことです。もし日常的に加熱式タバコやシーシャを好まれており、かつ以下のような症状に心当たりがある場合は、一度ご自身の睡眠をチェックしてみてください。
- 家族から「寝ている間に息が止まっている」「いびきがうるさい」と言われる
- しっかり寝たはずなのに、日中に強い眠気がある
- 朝起きたときに頭痛がしたり、体がだるかったりする
- 夜中に何度も目が覚めてトイレに行く
当院では、ご自宅で普段通りに眠りながら検査ができる簡単な「簡易睡眠検査」を行っています。検査の結果、治療が必要と診断された場合は、睡眠中の気道を広げる「CPAP(シーアップ)療法」などの適切な治療をスムーズに受けることができます。
また、心臓や血管を守るためには、加熱式タバコやシーシャも含めた「完全な禁煙」が理想的です。「やめたいけれど、なかなかやめられない」という方へのサポートも行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
加熱式タバコやシーシャは、一見すると従来のタバコよりクリーンな印象を受けますが、体、特に「睡眠」と「血管」に与える影響は無視できません。
「もしかして無呼吸症候群かもしれない」と不安に思われたら、一人で悩まずに、まずは当院へお気軽にお越しください。親切・丁寧にお話を伺い、皆様が毎日を健やかに、安心して過ごせるよう、質の良い睡眠と健康な心臓を守るお手伝いをいたします。











