みなさんこんにちは、鹿児島市のはやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。
「日中の眠気がひどくて…」「朝起きると頭が痛い…」 このような症状で受診される患者さまに、私が必ずお尋ねすることがあります。
それは、「ご家族、特に一緒に寝ていらっしゃるパートナーから、睡眠中のことについて何か言われたことはありますか?」という質問です。
ご自身の寝ている姿を、自分で見ることはできません。
だからこそ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断においては、ご本人の自覚症状と同じくらい、あるいはそれ以上に、「客観的な証言」が非常に重要なカギを握るのです。
今回は、なぜパートナーの証言が大切なのか、その理由をお話しします。
ご本人は「結果」しか感じていないことが多い
睡眠時無呼吸症候群の最も特徴的な症状である「いびき」や「呼吸の停止」は、当然ながら睡眠中に起こります。そのため、ご本人がその異常に気づくことは極めて困難です。
ご本人が感じるのは、
- 熟睡できず、日中に耐えがたい眠気に襲われる
- 夜中に何度も目が覚める(お手洗いなどで)
- 朝起きた時に、頭が重い、スッキリしない
- 集中力が続かない
といった、いわば睡眠の質の低下が招いた「結果」としての症状です。
これらの症状を、「最近疲れているから」「歳のせいだろう」と片付けてしまい、病気の発見が遅れてしまうケースが非常に多いのです。
パートナーは「夜間の名探偵」です
そこで名探偵のように活躍してくださるのが、すぐ隣で眠っている配偶者やパートナーの存在です。
ご本人に代わって、睡眠中に起きている「事件」の様子を、医師に伝えてくれる貴重な証人となります。
パートナーだからこそ気づける、SASを強く疑うサインには以下のようなものがあります。
- 特徴的ないびき: ただうるさいだけでなく、ガーガーという大きないびきが「パタッ」と突然静かになり、数十秒後に「グゴォーッ!」と、あえぐような、むせるような激しい呼吸と共に再開する。これは、呼吸が止まった後に慌てて呼吸を再開している典型的なサインです。
- 呼吸の停止: 「あれ?今、息してない…?」と、見ている側が不安になる瞬間。もし10秒以上続くようなら、それは間違いなく異常事態です。
- 苦しそうな様子: 穏やかな寝息とはほど遠く、息苦しそうにしていたり、胸や腹部が大きく上下したり、手足をバタつかせたりする。
- 頻繁な覚醒: 寝返りが異常に多かったり、何度も体勢を変えたりしている。本人は覚えていなくても、無呼吸による苦しさから脳が目覚め(覚醒反応)、睡眠が細切れになっている可能性があります。
これらの情報は、医師が診断を下す上で、検査データと同じくらい価値のある重要なヒントとなります。
受診の際に教えてほしい「パートナーからの証言」
もし、ご自身やパートナーのいびき・睡眠について心配なことがあれば、ぜひ受診前に睡眠中の様子を観察し、メモなどにまとめてお持ちいただけると診断が大変スムーズになります。
可能であれば、ぜひご一緒に診察室にお越しください。
【パートナーにお聞きいただきたいチェックリスト】
- いびきはどんな音ですか? (例:静かになったり、大きくなったりを繰り返す)
- 呼吸が止まっているように見えることはありますか? (もしあれば、だいたい何秒くらいか)
- 呼吸が止まった後、どのような呼吸をしますか? (例:大きなため息、むせる、あえぐ)
- 寝ている時に苦しそうに見えますか?
- 寝相は良い方ですか?悪い方ですか?
最近では、スマートフォンのアプリでいびきを録音することもできます。
音声の記録も非常に参考になりますので、もし可能であれば試してみてください。
愛情から生まれる「気づき」を大切に
パートナーのいびきや無呼吸を指摘することは、勇気がいることかもしれません。
しかし、それは間違いなく、相手の健康を心から心配する愛情の表れです。
もしパートナーから指摘されたら、どうか「うるさいな」と一蹴せず、真摯に耳を傾けてみてください。
睡眠時無呼吸症候群は、放置すれば高血圧や心臓病、脳卒中といった命に関わる病気のリスクを高めます。
早期に発見し、適切な治療を行えば、これらのリスクを大幅に減らすことができます。
そして何より、質の高い睡眠を取り戻すことで、日中の活動的な時間を取り戻すことができるのです。
当院では、患者さまご本人だけでなく、ご家族の不安にも寄り添うことを大切にしています。
お一人で悩まず、ぜひパートナーとご一緒に。もちろん、まずはお一人でのご相談も心よりお待ちしております。