みなさん、こんにちは。
はやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。
「太り過ぎは健康によくない」ということは広く知られています。一方、極端なダイエットや偏った食事による「やせ過ぎ」も、体調不良や筋肉量低下などにつながる可能性があります。
健康を考えるうえで大切なのは、単に体重を減らすことではありません。体格、筋肉量、腹囲、血圧、血糖、脂質などを総合的に確認し、自分に合った状態を保つことです。
今回は、肥満から生活習慣病が連鎖する「メタボリックドミノ」と、低栄養から筋力低下などが進む悪循環について解説します。
負の連鎖「メタボリックドミノ」とは?
生活習慣の積み重ねが最初の変化につながります
「メタボリックドミノ」は、内臓脂肪の蓄積を背景として、インスリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、糖尿病などが重なり、動脈硬化性疾患や臓器障害につながっていく様子を、ドミノ倒しに例えた考え方です。
メタボリックドミノは、正式な病名ではありません。生活習慣病が互いに関連しながら進行することを理解するための概念です。
体重増加には、食事や運動だけでなく、遺伝的な体質、睡眠不足、ストレス、飲酒、喫煙、薬の影響、ホルモンの病気など、さまざまな要因が関係します。
「本人の努力不足」と決めつけるのではなく、その人の生活背景や病気の有無を確認することが大切です。
高血圧や糖尿病が重なると循環器疾患のリスクが高まります
高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの危険因子が重なると、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まります。
これらの病気は、初期には自覚症状がほとんどないことがあります。そのため、健康診断で血圧や血糖、脂質などを定期的に確認し、異常を指摘されたら放置しないことが重要です。
生活習慣を見直すことで改善が期待できる段階もありますが、数値や病状によっては薬による治療が必要です。自己判断で治療を中断しないようにしましょう。
若い女性にも多い「やせ」に潜む健康リスク
BMIだけでなく、体重の変化や食生活も確認しましょう
一般に、成人ではBMIが18.5未満の場合を「低体重(やせ)」と分類します。
BMIは、体重を身長の二乗で割って算出します。BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)
ただし、BMIだけでは筋肉量、脂肪のつき方、栄養状態までは分かりません。短期間で体重が大きく減った、食事量が減った、疲れやすくなった、月経が不規則になったといった変化も重要です。
厚生労働省は、20~30歳代女性のやせを健康上の課題の一つとして位置付けています。過度の食事制限による低栄養は、貧血、月経異常、骨量低下、筋肉量低下などにつながる可能性があります。
低栄養と筋力低下の悪循環
高齢者医療では、低栄養、体重減少、筋肉量低下、活動量低下、食欲低下が互いに影響する状態を「フレイル・サイクル」と呼びます。
「フレイルドミノ」という言葉が使われることもありますが、一般的な医学用語としては「フレイル・サイクル」や「低栄養の悪循環」と表現する方が正確です。
この概念は主に高齢者を対象としたものですが、若い方でも、極端な食事制限によってエネルギーやたんぱく質が不足すれば、筋肉量や体力が低下することがあります。
また、重度の低栄養や摂食障害では、電解質異常、心機能低下、不整脈などが生じることもあります。体重減少が止められない、食べることへの強い恐怖がある、嘔吐や過度な運動を繰り返している場合は、早めに医療機関へ相談してください。
極端なダイエットを避け、続けられる生活を
食事は「帳尻合わせ」より毎日のバランスを
食べ過ぎた翌日に食事を極端に減らしたり、野菜だけで過ごしたりする方法は、長期的な健康管理には向きません。
主食、主菜、副菜を基本に、たんぱく質、野菜、果物などを無理なく組み合わせましょう。特定の食品を完全に禁止するより、食べる量や頻度を調整し、数週間から数か月単位で続けられる食生活を目指すことが大切です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、腎臓病などがある方は、適した食事内容が異なります。医師や管理栄養士へ相談してください。
運動は現在の体力に合わせて始めましょう
運動習慣がない方は、まず今より1日10分多く体を動かすことから始めましょう。通勤や買い物で歩く、階段を利用する、短時間の散歩を行うといった方法でも構いません。
成人では、歩行などの身体活動を1日合計60分程度行い、筋力トレーニングを週2~3日取り入れることが目安とされています。ただし、年齢、体力、持病によって適切な運動量は異なります。
胸痛、強い息切れ、めまい、動悸などがある場合は運動を中止し、医療機関へ相談してください。
自分の体の状態を知ることから始めましょう
健康的な体重は、一律の数値だけで決められるものではありません。
BMI、腹囲、筋肉量、血圧、血糖、脂質、体重の変化、生活習慣などを総合的に確認することが大切です。
健康診断で異常を指摘された、意図せず体重が減った、ダイエットをやめられない、最近体力が落ちたなど、気になる変化がある場合は医療機関へご相談ください。
当クリニックでは、循環器疾患のリスクや健康診断の結果についてご相談をお受けしています。必要に応じて、適切な診療科や専門機関をご案内します。











