AHI(無呼吸低呼吸指数)って何?数値の見方と体への影響について

みなさんこんにちは、鹿児島市のはやかわ循環器内科クリニック院長の早川です。

「ご家族からいびきを指摘された」「夜中に何度も目が覚める」「日中、どうにも眠くて仕事に集中できない」 こんなお悩みはありませんか?
もしかしたら、それは「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」のサインかもしれません。
そして、この睡眠時無呼吸症候群の重症度を判断する上で、非常に大切な指標となるのが「AHI(無呼吸低呼吸指数)」です。

今回は、このAHIとは一体何なのか、そしてその数値が私たちの体にどのような影響を及ぼすのかについて、分かりやすく解説していきます。


AHIとは、睡眠中の「呼吸の乱れ」を数値化したもの

AHIは、Apnea Hypopnea Indexの略で、日本語では無呼吸低呼吸指数(むこきゅうていこきゅうしすう)と呼ばれます。

これは、「睡眠1時間あたりに、呼吸が10秒以上止まる『無呼吸』や、呼吸が浅くなる『低呼吸』が何回発生したか」を示す数値です。

睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすると、体に取り込まれる酸素の量が減ってしまいます。この状態が頻繁に起こると、体は酸欠状態になり、心臓や血管に大きな負担をかけてしまうのです。

AHIの数値でわかる重症度

AHIの数値によって、睡眠時無呼吸症候群の重症度は以下のように分類されます。

重症度AHI(1時間あたりの回数)状態の目安
正常5回未満健康な状態です。
軽症5回以上 15回未満1時間に5〜14回、呼吸が止まったり浅くなったりしています。
中等症15回以上 30回未満1時間に15〜29回、呼吸が乱れています。4分に1回以上のペースです。
重症30回以上1時間に30回以上、呼吸が乱れています。2分に1回以上の頻度で発生しており、体に深刻な負担がかかっている状態です。

例えば、AHIが「30」と診断された場合、それは睡眠中に1時間あたり30回、つまり平均して2分に1回は無呼吸または低呼吸の状態に陥っていることを意味します。
眠っている間、知らず知らずのうちに体は低酸素状態と覚醒を繰り返しているのです。
これでは、ぐっすり眠れるはずがありませんし、日中に強い眠気を感じるのも当然と言えるでしょう。

AHIが高いと、なぜ危険?循環器専門医からの視点

AHIが高い状態、つまり睡眠時無呼吸症候群を放置すると、様々な生活習慣病のリスクが高まることがわかっています。
特に、循環器系の病気との関連は非常に深く、注意が必要です。

  • 高血圧: 睡眠中に呼吸が止まるたびに、体は危険を察知して交感神経を興奮させ、血圧を上昇させます。これが毎晩繰り返されることで、慢性的な高血圧につながります。事実、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約半数に高血圧が認められると言われています。
  • 不整脈: 低酸素状態は心臓に直接的な負担をかけ、心房細動などの不整脈を引き起こす原因となります。
  • 心筋梗塞・狭心症: 血圧の上昇や低酸素状態は、心臓の血管(冠動脈)の動脈硬化を促進し、心筋梗塞や狭心症のリスクを高めます。
  • 脳卒中: 高血圧や動脈硬化は、脳の血管にも影響を及ぼし、脳梗塞や脳出血といった脳卒中の引き金にもなります。
  • 心不全: 長期的に心臓に負担がかかり続けることで、心臓のポンプ機能が低下してしまう心不全を招くこともあります。

このように、睡眠時無呼吸症候群は、単なる「いびき」や「眠気」の問題ではなく、命に関わる病気のリスクを高める危険な状態なのです。

気になったら、まずは検査を

「もしかして自分も…?」と心配になった方もいらっしゃるかもしれません。
AHIは、専門の検査で調べることができます。

当院では、ご自宅で手軽に行える簡易検査をご用意しています。
腕時計のような機械と指先に付けるセンサーを装着して、一晩普段通りに眠っていただくだけで、睡眠中の呼吸の状態や血液中の酸素濃度を測定できます。

この簡易検査でAHIが高い数値を示した場合や、より詳細な評価が必要な場合には、入院して行う精密検査(PSG検査)をお勧めすることもあります。

まとめ

AHIは、睡眠の質と健康状態を知るための重要なバロメーターです。
この数値が高いということは、睡眠中にあなたの体が危険な状態にさらされているというサインに他なりません。

いびきや日中の眠気は、体が発しているSOSかもしれません。「たかがいびき」と軽視せず、ご自身やご家族のことで気になる症状があれば、どうぞお気軽に当院にご相談ください。
循環器の専門家として、そして地域の皆さまの“かかりつけ医”として、親身にお話を伺い、適切なアドバイスをさせていただきます。

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