その高血圧、夜中の「いびき」が原因かも?睡眠時無呼吸と高血圧の怖い関係

みなさんこんにちは、院長の早川です。

高血圧は、日本人の国民病とも言われ、鹿児島市でも多くの方が治療に取り組んでいらっしゃいます。
「毎日きちんと薬を飲んでいるのに、なかなか血圧が下がらない」「日によって血圧の変動が大きい」といったお悩みはありませんか? 実はその原因の一つに、夜間の睡眠中に起こる「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)」が隠れている可能性があるのです。

「いびきが大きいと家族に言われる」「日中、耐えられないほどの眠気を感じる」といった症状に心当たりがある方は、特に注意が必要です。今回のブログでは、この睡眠時無呼吸症候群が、なぜ高血圧を引き起こしてしまうのか、そのメカニズムを分かりやすく解説し、適切な対処法についてお伝えしたいと思います。

そもそも睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、文字通り、睡眠中に一時的に呼吸が止まってしまう、または呼吸が浅くなる状態が繰り返される病気です。医学的には、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や呼吸量の低下(低呼吸)が、1時間あたり5回以上起こる状態を指します。

主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 大きないびき: 特に、いびきが一時的に止まり、その後「ガッ!」と大きな呼吸とともに再開する場合は要注意です。
  • 日中の強い眠気: 会議中や運転中など、通常では考えられない状況で眠気に襲われる。
  • 起床時の頭痛や倦怠感: 熟睡できていないため、朝起きてもスッキリしない。
  • 夜間の頻尿: 睡眠中に何度もトイレに行きたくなる。
  • 集中力・記憶力の低下

SASの怖いところは、睡眠中の出来事であるため、ご自身ではなかなか気づきにくいという点です。多くの場合、ご家族やベッドパートナーから「いびきがうるさい」「息が止まっているよ」と指摘されて初めて気づくケースが少なくありません。鹿児島市にお住まいの方の中にも、知らず知らずのうちにSASを発症している方がいらっしゃるかもしれません。

なぜ睡眠時無呼吸が高血圧を引き起こすのか?そのメカニズム

では、なぜ睡眠中の呼吸トラブルが、日中の血圧にまで影響を及ぼすのでしょうか?そのメカニズムは、主に以下の3つのポイントで説明できます。

  1. 繰り返される「低酸素状態」と「交感神経の活性化」 睡眠中に呼吸が止まると、体の中に取り込まれる酸素の量が減り、血液中の酸素濃度が低下します(低酸素状態)。体はこれを「危険な状態」と判断し、生命を維持するために交感神経を興奮させます。交感神経は、体を活動モードにする神経で、心臓の拍動を速め、血管を収縮させて血圧を上昇させる働きがあります。 SASの方は、この「無呼吸(低酸素)→呼吸再開」というサイクルを一晩に何度も繰り返します。そのたびに交感神経が刺激され続けるため、睡眠中はもちろんのこと、日中も交感神経が過剰に働きやすい状態が続いてしまいます。これが、持続的な高血圧の大きな原因となるのです。
  2. 血管への物理的なストレスと動脈硬化の進行 呼吸が止まることによる低酸素状態と、呼吸が再開した際の急激な酸素供給(再酸素化)の繰り返しは、血管の内側の壁(血管内皮)に大きな負担をかけ、ダメージを与えます。このダメージは酸化ストレスと呼ばれ、血管の柔軟性を失わせ、動脈硬化を促進させる原因となります。動脈硬化が進行すると、血管が硬く狭くなり、血液が流れにくくなるため、さらに血圧が上昇しやすくなります。
  3. ホルモンバランスの乱れ 私たちの体には、血圧を調節する様々なホルモンが存在します。睡眠時無呼吸による低酸素状態や交感神経の過剰な働きは、これらのホルモンの分泌バランスを乱すことが分かっています。例えば、血圧を上げる作用のあるホルモンが増加したり、血圧を下げる作用のあるホルモンが減少したりすることで、高血圧の状態が維持されやすくなります。

このように、SASは単に睡眠の質を低下させるだけでなく、低酸素、交感神経の活性化、血管へのダメージ、ホルモンバランスの乱れといった複数の要因を通じて、高血圧の発症や悪化に深く関わっているのです。

睡眠時無呼吸症候群を放置するリスク

睡眠時無呼吸症候群を「たかがいびき」と軽視して放置すると、高血圧だけでなく、以下のような深刻な病気を引き起こすリスクが高まります。

  • 心筋梗塞・狭心症
  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
  • 不整脈
  • 糖尿病
  • 脂質異常症

これらの生活習慣病は、互いに悪影響を及ぼし合い、命に関わる事態を招きかねません。また、日中の強い眠気は、交通事故や労働災害のリスクを高めるなど、社会生活にも大きな支障をきたす可能性があります。

鹿児島市でできる睡眠時無呼吸症候群の検査と治療

もし、ご自身やご家族に「大きないびき」「日中の眠気」「起床時の倦怠感」「治療抵抗性の高血圧」などの症状があれば、一度、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみることを強くお勧めします。

当クリニックでは、まずご自宅で簡単に行える簡易検査(指や鼻にセンサーをつけて眠る検査)を実施し、SASの疑いがあるかどうかを調べます。さらに詳しい検査が必要な場合は、入院して行う終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査を手配することも可能です。

検査の結果、SASと診断された場合の主な治療法はCPAP(シーパップ:経鼻的持続陽圧呼吸療法)です。これは、睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道の閉塞を防いで無呼吸をなくす治療法です。多くの場合、CPAP療法によって睡眠中の無呼吸や低酸素状態が改善され、高血圧の改善も期待できます。実際に、CPAP治療を開始してから「血圧の薬が減った」「血圧が安定した」という患者さんは少なくありません。

その他、軽症の場合はマウスピースによる治療や、減量、禁煙、寝姿勢の工夫といった生活習慣の改善も有効です。

最後に:気になる症状があれば、お早めにご相談ください

高血圧の原因は様々ですが、もしあなたが「なかなか血圧がコントロールできない」「いびきや日中の眠気が気になる」と感じているなら、その背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れているかもしれません。

放置すれば、心血管系の病気など、より深刻な事態を招く可能性があります。しかし、早期に適切な検査と治療を行えば、高血圧の改善はもちろん、様々な合併症のリスクを減らし、日中の眠気からも解放され、より質の高い生活を送ることが可能です。

当クリニックでは、鹿児島市の皆様の睡眠と健康を守るため、睡眠時無呼吸症候群の診断から治療まで、丁寧にサポートさせていただきます。「もしかして?」と思ったら、一人で悩まず、どうぞお気軽に当クリニックにご相談ください。お電話またはウェブサイトからご予約いただけます。

皆様の健康な毎日を取り戻すお手伝いができれば幸いです。

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